64歳になっても

日々のブログ

大麻合法化について考える 〜ドラッグ関連読書記録〜

世界的な流れとして、大麻の合法化が進んでいるように思う。

特に2018年にはカナダで嗜好用大麻の国全体で合法化された。「先進国が」「国全体で」「嗜好用の」大麻を合法化したことは、とても大きい出来事であるように思う。

国ごとの合法/違法の状況はWikipediaのこちらのページに詳しい。

 

その状況のなかで、「薬物、ダメ、ゼッタイ。」の原則を学校やあらゆるマスメディアに強制されてきた我々日本人は、何を考えるべきだろうか。この記事は、私自身の読書記録として読んだ本を紹介するという内容になっている。

 

本題に入る前に私のドラッグに対する立場をはっきりさせておく。私自身は日本で違法とされている薬物を使用したことはないが、それらが人間に悪影響を及ぼすのは不適切な使い方をした場合であると考えている。また、機会があれば使用したい、なぜなら、安全な方法で用いる限りにおいては、精神の変容を手軽に体験できる方法の一つであると考えているからである。

 

以下、読んだ本の紹介

 

オリジナルは1972年に書かれたものだが、ドラッグに関する基本的な論点はほとんどこの本でカバーされているように思う。ドラッグの作用におけるセットとセッティング(薬物使用にあたっての期待感と、使用者をとりまく社会的、物理的環境)の影響の大きさ、違法とされるドラッグと違法とされないドラッグ、違法とされるドラッグが一連の反社会的行動と結び付けられている現状、ドラッグについての言説に含まれる偏見(過度にネガティブである場合もあれば過度にポジティブである場合もある)などに対する筆者の主張が収められている。

 

基本的に、現在なされているドラッグ賛成派と反対派の議論は、この本で書かれていることの域を出ないと思う。いくら「ドラッグは人体に有害!ソースはこの論文!」と反対派が主張したところで、「それは研究者のドラッグに対するネガティブな価値判断があるからそのような結果になるだけだ」「研究手法に問題がある、特にセットとセッティングの効果を考慮していない」という反論から抜け出せないのでは?(私は実際にドラッグの有害性についての論文を検討したりはしていないので誰かやってください。)

 

 古今東西あらゆるドラッグの紹介、といった内容。ドラッグを違法/合法で分けること自体がナンセンスであるように思えてしまう。「ドラッグ」を全て一括りにすることはできないし、どう考えても使用しないほうがいいものや適切な使用が難しいもの(シンナーや、自然のものから特定の成分を抽出したもの)があること、摂取の方法(経口、喫煙、静脈注射)について詳しく知ることができる。

 

 依存症治療についての本だが、特筆すべきは近年の「ゼロ・トレランスからハームリダクションへ」というパラダイムシフトについての記事。ゼロ・トレランスとは不寛容、すなわち依存の対象と一切の関わりを持たない(アルコール依存症であれば一滴も口にしない)ことを重視する価値観から、ハームリダクション、すなわち依存の対象を止める必要はないがそこに害や苦しみが存在する場合にそれを取り除くことを目的とするという価値観への転換である。

 

ドラッグは「ダメ、ゼッタイ。」から、「用法用量を守って正しくお使いください」という価値観が主流になる未来があるのか?

 

従来の家族療法についての章もおもしろい。

 

言わずとしれた中島らものエッセイ。ドラッグの「ダメな使い方」の見本。睡眠薬に始まり、シャブについての章では反社会勢力との関係の話があったり。サボテンを摂取するも結局うまく効果を得られなかった、みたいな話があるのも、どんなときもうまくトリップできるわけじゃないとわかってとても良い。

咳止め薬「ブロン」の乱用についてはTwitterでも観測されるので人ごとじゃないなと感じる。

 

 

 

 

以上、読んでいただいてありがとうございました。他にも良さげな書籍があれば教えてください。